■たまプラ油田開発プロジェクトとは・・・
次世代郊外まちづくり・住民創発プロジェクトに認定された15企画のうちの一つ「たまプラ油田開発プロジェクト」(以下,たまプラ油田)。
このプロジェクトは、たまプラーザ地域の家庭や飲食店等で排出された廃食油を回収し,クリーンなバイオ燃料にリサイクルすると同時に発電機の燃料として利用して,その売電収入などでコミュニティバスの運行を目指す企画です。
横浜市と東急電鉄が進めている次世代郊外まちづくりは,2014年度のリーディング・プロジェクトとして「地域のエネルギーマネジメントに向けた仕組みづくり」を推進しており,たまプラ油田の今後の展開に向けても連携・協力を考えています。
たまプラ油田の廃食油リサイクルを担当するのは、墨田区にある株式会社ユーズ(TOKYO油田)という会社です。今回東急電鉄から、たまプラ油田の代表・村田ちさとさんにユーズの工場見学をお願いしたところ、下町の商店街の散策を含めた「TOKYO油田見学ツアー」が企画されました。そこで「たまプラnetwork」の辺見さんにご協力いただき,住民創発プロジェクト参加者の皆さまにもお声掛けをしました。
5月22日の見学ツアー当日は,地域の皆さまと横浜市・東急電鉄合わせて約20名が参加。ユーズの代表・染谷ゆみさんと村田さんに,工場と下町の商店街をご案内いただきました。
世界で初めて廃食油のバイオディーゼル燃料化に成功したリサイクル工場の見学レポートは以下のとおりです。
■環境にやさしい電気バスで押上駅を出発!
参加者は押上駅で集合です。ガイド役で颯爽と登場の染谷さん。移動には墨田区内循環バスを利用しました。環境に配慮した小型電気バスのその静かな乗心地と外観がとても印象に残りました。
■下町人情を大切にする,キラキラ橘商店街を散策
循環バスを降りて最初に見学したのは,キラキラ橘商店街。京成曳舟駅から徒歩5分,昭和の風情があふれ,下町人情を大切にしている商店街です。
街路灯をよく見ると,いろいろな種類の風景画がフラッグで飾られています。これは,葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」。45基の街路灯の一つ一つに,詳しい説明書きも付けられていました。
■江戸菓子「砂糖漬」の製法技術を伝える梅鉢屋
次に見学したのは,江戸の技「砂糖漬」を守り続ける唯一の菓舗,梅鉢屋。砂糖漬とは,新鮮な野菜・果物をそのままお菓子に仕立てた野菜菓子のこと。この日はご主人のご厚意により,砂糖漬やお店の歴史,そして実際の厨房で製法・技術について教えていただきました。
砂糖漬けは,江戸時代に農産物・海産物の長期保存を目的として糖蜜で加工したことが発祥と言われていて,漬け物などの「塩漬」に対し「砂糖漬」と呼ばれ出回っていたとのこと。現在では梅鉢屋が,江戸時代からの砂糖漬・野菜菓子の技法を忠実に伝える唯一の菓舗だそうです。
■油田モール見学。TOKYO油田2017とは?
次に,株式会社ユーズが運営する「油田モール」を見学。油田モールとは,「環境にやさしい21世紀のまちづくり」をテーマに,株式会社ユーズの本社内にオープンさせたマルチ・テナント型のコミュニティスペース。ここで,染谷さんから「TOKYO油田2017」について詳しくご説明いただきました。
「TOKYO油田2017」は,首都圏の家庭や飲食店等で使い終わった廃食油を回収し,二酸化炭素を増やさないバイオディーゼル燃料などに再資源化することで,資源循環型社会をみんなでつくる新時代のリサイクルプロジェクトです。
天ぷら油を日本で一番使うのが東京とのこと。染谷さんは,2017年までに東京で使われたすべての廃食油の再資源化を目標に掲げ,プロジェクト名称を「TOKYO油田2017」としたそうです。
■廃食油をバイオ燃料に精製する工場へ
そしていよいよ,世界で初めて廃食油のディーゼル燃料化に成功した工場の見学です。工場内に入るとさっそく,廃食油をディーゼル燃料,VDF(ベジタブル・ディーゼル・フューエル)に精製する生産プラントが目に入りました。想像よりもコンパクトなサイズに参加者もびっくり。2畳ほどのスペースしかとらないこのVDF生産ミニプラントは販売もしているそうです。
なお,家庭で出たサラダオイル・ごま油・オリーブオイルなどの植物油,ラードなどの動物性油など,食用の油はすべてリサイクル処理ができるとのこと。
VDFは廃食油の再利用(リサイクル)というだけでなく,硫黄酸化物を出さず・黒煙が軽油の1/3以下と地球にやさしいクリーンなエネルギー。TOKYO油田の回収トラックはすべて,ここで精製したVDF燃料で動いているそうです。
資源の循環と生活環境への貢献を実現する独自の技術と染谷さんの熱い思いが,この工場には詰まっていました。
たまプラーザでも,現在数ヵ所で使用済み食用油の回収を行っています。たまプラーザで集まった油も,この工場で精製されて再資源化されることになります。
ツアーに同行して工場と周辺地域を案内してくださった染谷さんに大変感謝するとともに,この日は,たまプラ油田の成功による資源循環型コミュニティの実現に参加者全員が想いを馳せる一日となりました。
(写真/野渕幹生・岡本正義 文/岡本正義)