<特別寄稿>
美しが丘中学校 今年度の卒業生
林 銀次郎さん
中学生が考える未来のたまプラ
「美中プラン発表会」レポート

DSC01123-2

「たまプラーザって実は凄いことをしているんだな」

3月7日金曜日、たまプラーザテラス プラーザホールで、僕ら美しが丘中学校の3年生による「次世代郊外まちづくり シビックプライド 美中プラン」のプレゼンテーションが行われました。
この日が来るまで、社会科公民の授業で、未来のたまプラーザをどのような「まち」にしたいか、ということをグループごとに話し合い、それぞれ発表の準備をしてきました。

当日、僕が一番驚いた事は、会場の雰囲気です。
僕や他の生徒達の想像では、会議室のような部屋の中に中学校の先生と保護者、東急電鉄さんの関係者くらいしかいないと思っていました。
しかし実際は、大きなホールの中に一般の方々や大学の先生、石塚計画デザイン事務所の方々、それにカメラマンやメディアの方々までいたのです。びっくりしましたよ。

「たかが公立の小さな中学校がやる事なのに、こんなに本格的なことしてくれるの!?」
その時は、思わずそう感じました。きっと他の皆もそうだったでしょう。

僕らが暮らすこのまちでは、それほどの取り組みをしているんだな、そのことを今まで気がつかなかっただけで、たまプラーザって実は凄いことをしているんだな、とそんな気持ちになりました。
DSC01127-2

僕のグループでは「自然を生かす」というテーマで、人と自然との関わりを大事にしたい、ということについて考えてきたことを発表しました。模造紙には伝わりやすいように木のイラストを描いて工夫をしました。発表も上出来だったと思います。

他のグループの発表についても色々と感じたことはあります。
「自然を生かす」や「落ち葉拾い」、「電柱を地下に埋める」、「グルメ活性化」、「ゴミ箱設置」などなど、グループそれぞれのテーマがたくさん出ていたし、同じようなテーマでも、模造紙の書き方や発表内容は様々だったので、どのグループの発表も興味深く聞くことが出来ました。

ですがやっぱり発表の内容よりも、会場に入っただけで感じたあの雰囲気の方が印象に残っています。笑

たまプラーザの未来を担うのは僕ら若者だと思います。今回のプレゼンテーションはとても良い刺激になり、また勉強になりました。ここで学んだことをたまプラーザのまちづくりに役立てていきたいと思いました。

そして、僕たち美中生にこんな素晴らしい場を用意してもらったことに感謝しています。
(文/林 銀次郎)

林 銀次郎 (はやし ぎんじろう) さん プロフィール
1999年生まれ 将来は海外に関わりのある仕事を希望。
好きな食べ物はフレンチトースト(!)

(写真/大野承・辺見真智子)

DSC01121-2
▲ポスターセッション
会場に立てかけられたポスターに中学生,保護者,一般来場者などが「いいね!シール」を貼り,素晴らしい提案に投票しました。
DSC01125-3
▲各クラスで最も「いいね!シール」数が多かった3つのプラン。(左から1組,2組,3組)

IMG_4710

プレゼン修了後は「いいね!シール」の多かった3提案の代表者が紹介され,東京理科大学の伊藤香織先生が講評。先生や来場者からはお褒めの言葉とともに厳しい質問も出ましたが,3人の中学生たちは見事に答え,会場からは感嘆の声が。

▼グループごとに一生懸命考えた提案と工夫を凝らしたポスターの一部。
石塚計画デザイン事務所・千葉晋也さんの美中出張授業「プレゼンテーション/伝える力を学ぼう」(1月30日)がしっかりいかされています。
DSC01136-2
DSC01130-2
DSC01138-2

まちづくりの拠点をたまプラに
第1回場づくりワークショップ開催

DSC01066
2月2日(日)たまプラーザ地域ケアプラザで、第1回場づくりワークショップが、東京大学大学院小泉秀樹先生、建築家の末光弘和さんを迎え、約30名が参加して行われました。(次世代郊外まちづくり住民創発プロジェクト「交流の森」「たまプラフレンズ」共催)

当日のプログラムは、
1.開会挨拶
2.ロードマップの確認
3.末光さんからの情報提供
4.3人ワークショップ「現状と課題」
5.3人ワークショップ「どんなことしたい」「どんな機能がほしい」
6.末光さんコメント
7.小泉先生講評
8.閉会挨拶

進行は藤本が担当。
進行は藤本が担当。

まず、ロードマップの確認   3回のワークショップと横浜市、東急電鉄との協議を重ねながら、9月の住民創発プロジェクト報告会を目標に、コンセプト、デザイン、設備機能、事業計画、運営計画をまとめていこうというものです。

s2-rordmap

次に、末光さんからの情報提供

DSC01060
これまで検討してきた「交流の場」のプランについて説明がありました。
A.たまプラーザ駅前、美しが丘中部自治会館前交差点、美しが丘公園の「3拠点分散案」
B.美しが丘公園を拠点とした「交流の塔と可動ユニット案」
C.美しが丘中部自治会館前の交差点を活用した「4つ角案」
D.美しが丘公園に複数配置する「成長ユニット案」

そして、ワークショップです。

場のWSDSC01087

石塚先生にファシリテーション勉強会(*)で教えていただいた、「3人ワークショップ」のスタイルと「くくりシート」を早速応用します。(*「ファシリテーション勉強会=1月19日開催、講師は石塚計画デザイン事務所の石塚雅明先生。たまプラフレンズ主催)
みなさん、手慣れたものです。ポストイットに書いて、くくりシートに貼っていきます。
勉強会に出席した方は、習熟度も進んでいます。
参加者のみなさんが、コレと思うものに、カラーシールを貼って、ワークショップは終了。

DSC01084
DSC01116

それを後日まとめたもの

s2-genjyo
s2-want
s2-kino

最後に、末光さんのコメントと小泉先生の講評をいただきました。
4月中には、第2回場づくりワークショップを開催する予定ですので、よろしくお願いします。

(写真/立山徹   文/藤本孝)

 

まちづくりWho’s who vol.4
林 月子さん
(フラッシュモブ実行委員長)
今だから話します,
フラッシュモブのあれこれ。

DSC00888

2013年11月4日午後2時,たまプラーザ駅北口のたまプラーザテラス・ステーションコートで,次世代郊外まちづくり住民創発認定プロジェクト,フラッシュモブ「たまプラー座だよ!全員集合!」が行われた。スタッフ・キャストのほとんどが,たまプラーザの住民。大人と子ども,およそ150人が参加した。
http://www.youtube.com/watch?v=jri0FgYPNzU

林月子さんロングインタビューもくじ
■私の原体験 みんなでやると楽しい!
■ワクワクが次の元気に繋がっていく・・・
■フラッシュモブ×ダブルダッチ  きっかけは・・・
■カプリオールは,このまちのヒーロー
■テーマを決めることは,とても大事なこと
■1,349人分のアンケートを回収・・・でも,ちょっとしんどくなった
■「モブっていいとも」
■「林さんに何かあった時は・・・」
■「雨が降ったらどうしますか?」
■「やべえぞ,これ。むちゃくちゃいいぞ」
■本番終了後のアンケート「たまプラーザがうらやましいです」
■もう一人の自分
■大きな恐怖,不安とプレッシャー
■動画の編集 一番いいシーンで全員が写るように
■この際,聞いておこう Q&A 

■私の原体験 みんなでやると楽しい!

私はお祭りが好きだから,こういうフラッシュモブみたいなことをやりたいなって思った・・・。でも,そういう発想をする原体験が実はあった,ということを思い出したんです。
私は岐阜県出身で,母の実家が岐阜県郡上郡八幡町というところなんですけど,ここは有名な郡上踊りのまちで,ほんとに小さい時から,その徹夜踊りに親戚でわーっと乗り込んでいくというのが,毎年の楽しみのひとつでもあったんです。
私は一人っ子なんですが,母が8人兄弟姉妹で,お盆とかお正月になると親戚中が集まる。すると何十人ってなって,みんなで雑魚寝をして泊まる。
そして,そこで演芸大会をやるんですね。それぞれの家族や子供たちが・・・みんな,なんかやるの,芸を(笑)
漫才やる人もいるし,うちの父なんかは手品を,私はいとこたちといつもだいたい人形劇をやっていました。
お正月までにストーリーを考えて,その登場人物の人形をデザインして,母から端切れや毛糸をもらって人形劇のお人形を作る。幼稚園ぐらいからそういうことをやっていて,ちょっと年上のいとこのお姉ちゃんがやっているのを見て,じゃあ次の時には私もああいうのをやろうって企画を練るわけですよ。
おじいちゃんは,扇子を持って講談をやったりとか,ピンクレディが流行っている時にはピンクレディの歌を踊るいとこがいたり・・・。
それがすごく楽しかったんですね。
それに夏は,お化け屋敷ごっこをやるんです。親戚のおばちゃんがゲゲゲの鬼太郎になったり,みんな本格的にメイクしてお岩さんやのっぺらぼうになって。
うちの父は毎回ドラキュラでした。それでいい演し物をした人には,おじちゃんなんかがお菓子をくれるわけ。「好きなの選べ」みたいな感じで。
そういうのがあったので,今のこういう私になったのかなって。
一人っ子だったけど,大家族の雰囲気を味わえる大事な時間だったんですね。みんなでなんかやると楽しいなあーっていうのは,今のフラッシュモブにつながっている気がするんです。
トップに戻る

DSC00891

■ワクワクが次の元気に繋がっていく・・・

おばあちゃんのうちっていうのは,ほんと昔の家で,当時水道とかなくて,樋みたいなもので山から水を水槽まで引いて,一つ目の水槽ではスイカを冷やしたり野菜や食器を洗い,それより一段低くなっている水槽で泥野菜を洗い,最後は鯉がいる大きい池にその水が流れて行って,鯉が食器についていた残飯を食べる。その流しは家の外にあって,中に入ると土間で大きなかまどがある。
何十羽って鶏がいて,近所の人が卵を買いに来る。で,親戚が集まるとおじちゃんがバーンと鶏の首をはねて鳥鍋にしたり・・・。
まわりはほんと山と田んぼばっかりで,おばあちゃんに大きなビニール袋渡されて,これ持って田んぼ走って来いって言われる。いとこたちと走ると田んぼに隠れていたイナゴがバァーっと飛び出して袋に入って,それがいっぱいになると,おばあちゃんがかまどで佃煮にしてくれて食べる。
それから鮎釣り。長良川の上流のほうなので,鮎解禁になるとおじちゃんたちが「おーい,川行くぞ」って言うと私たちは水着着たままジープの後ろに乗って,ほんとに道のない崖を降りて行く。そこでおじちゃんたちが鮎を釣っているあいだ,私たちは川で遊んでいて。しばらくすると釣ったばかりの鮎におじちゃんが串をガァーって刺して焼いてくれて「焼けたぞー」って呼ばれる(笑)
ほんとに野生の子ども時代。私が住んでいたのは市内なんですが,おばあちゃんのところに行くと自然がいっぱいあって・・・。
山の奥のほうにお墓があったので,お墓参りは山をずーっと登って行くんですね。時にはイノシシとかクマの死骸にも遭遇。ハエがワァーってたかっている。クマの死骸とかすごく怖いです。そこでアアァーってちょっと興奮するんです。
「ねえねえ,クマ死んでたよぉー」って(笑)
春には山菜採りに行ったりもしました・・・。そういう体験が今のイベント好きな自分を作った気がする。日常とはちょっと違うインパクトのある出来事にワクワクしたり,興奮することが次の元気に繋がっていくってことを,小さい時からなんか体感していたんだろうなって思います。
トップに戻る

DSC00915

■フラッシュモブ×ダブルダッチ  きっかけは・・・

一昨年(2012年)の夏以降,次世代郊外まちづくりのワークショップに参加させていただくなかで,改めて自分とまちのかかわりについて考えるようになってきたんですね。私は3人の子どもをこのまち,また,このまちの人たちに育ててもらった。そのご恩返しに少しでも繋がるのならばという気持ちでPTAの会長などもお引き受けしてきました。
それまでは,誰かがこのまちをいいまちにしてくれないかなって思っていたんですね。子どもたちを育てるのに,安全で安心なまちに誰かがしてくれないかなーって思っていたんだけれども,自分がPTAや自治会のことをやらせていただくうちに,あ,誰かにお願いすることではなく,自分たちがやらないといけないことなんだなって思い始めるようになった。でも,実際にどう行動に移していいかわからなかった。
そんな中で次世代郊外まちづくりのワークショップに参加してみて,ほんとに具体的に自分が考えていることが,どんどん引き出されていった。あ,私はこういうふうに思っていたんだ,こういうまちになったらいいなって思っていたんだってことが自分の中で再確認する作業をさせていただいた。
というのと同時に,フラッシュモブというのが世の中で流行っていて,TVやYouTubeで見て,フラッシュモブという名前も知らなかったんだけど,面白いなって思っていた時に,ちょうど「たまプラ大学」で松田さん(株式会社ワコールのアートプランナー)のお話を聞いて,あ,たまプラでもできるかも,と思った。
それと,私はダブルダッチ(2本の縄を使って跳ぶ縄跳び競技)にかかわっているのですが,私が調べた限りではダブルダッチでフラッシュモブをやっているものはなかった。ということは,ダブルダッチでフラッシュモブをやれば,多分それは世界初になるし,私が声をかければ,すごくたくさんのダブルダッチ界の人たちが協力してくれると信じていたからダブルダッチでフラッシュモブをやりたいと思った。
たまプラーザで,フラッシュモブをダブルダッチでやる。それをやることによって,たまプラーザのまちもダブルダッチも注目を浴びる。いいことばっかりじゃん,って思ったのが最初です。
この話を初めに相談したのが,カプリオール(ダブルダッチパフォーマーのプロチーム。世界大会2連覇)が所属しているプロダクションの社長で,それが4月の4日か5日。
それから簡単な企画書をつくって,石塚計画デザイン事務所(次世代郊外まちづくり住民創発プロジェクトのコンサル担当)の東京事務所トップの千葉さんに相談に行きました。それが5月の初めです。そしたら,面白いねって話になり,せっかくだから住民創発プロジェクトとしてやったら,いいんじゃないかって。
まだ,横浜市・東急電鉄の「基本構想」(*1)も何も出ていない頃です。でも,この企画だとダブルダッチの宣伝にしかならないから,シビックプライド(*2)的な要素を入れたほうがいいと。  
それから,私はシビックプライドについて,ちょっと調べて,どういう要素が必要なのかとか考えて,その後の5月の個別相談会ではストーリー性が必要だ,シナリオを書いてみたらと・・・いろんなアドバイスをいただきました。

(*1)横浜市・東急電鉄による「次世代郊外まちづくり基本構想2013/東急田園都市線沿線モデル地区におけるまちづくりビジョン」 
(*2)シビックプライド まちに対して持つ誇りや愛着
トップに戻る

DSC00899

■カプリオールは,このまちのヒーロー

それから,ダブルダッチをやるのだったら,もちろんたまプラから育ったチームのカプリオールに出てほしかった。カプリオールが出ないと意味がないと思ったから,まずカプリオールの10月,11月の数日のスケジュールをおさえておきました。ダブルダッチが上手なチームや,スケジュールが空いているチームは他にもいたと思うけど。カプリオールは,このまちのヒーローだし,この街のシンボルだと私は思ったから。
カプリオールは,まだ体育系大学の予備校生だった頃から毎年,たまプラの夏祭りでパフォーマンスをしてみんなに拍手をもらって応援してもらってきたチームです。
私の子どもたちがこのまちに育てられたように,カプリオールも,やっぱりこのまちに育てられて世界のトップパフォーマーになった。カプリオールはこのまちの誇りだから,カプリオールと一緒にフラッシュモブを行うことにこだわったんです。
私が初めてダブルダッチに出会ったのは,14年ほど前,子どもたちを連れてたまプラーザ夏祭りに行った時。ダブルダッチを見て「何あれ???」って思ったその感動が美しが丘ダブルダッチクラブの設立につながっています。
だから,最初に私が考えたストーリーは,そういう私の実体験をフラッシュモブのなかで描きたいなっていうのがあったんですね。フラッシュモブを観た人が,「何これ???」って私のように感動したら,また何か新しいことがこのまちのなかで生まれるんじゃないかって。
フラッシュモブのエンディングシーンは,私と娘に見立てた親子連れがカプリオールに駆け寄って「おにいちゃん,今のは何?」って聞いてカプリが「今のはね・・・」って答えてる。それをバーッとカメラを引いて撮る。そういうのにしたかった。実際は全然違うものになっちゃたけど・・・。
トップに戻る

DSC00901

■テーマを決めることは,とても大事なこと

モブのテーマは「そだちあい」にしたんですが,そのテーマを決めるまでに実はとても時間をかけました。
最初私はテーマってそんなに大事なことなのかなーって思っていて,フラッシュモブを駅前で,こういうパフォーマンスにしたいっていうのはもうイメージとしてあったので,それができれば,テーマなんて別にいいのに,と思っていたんだけど,石塚計画デザイン事務所の方たちと相談するたびに「テーマをまず決めましょう」と言われたんですね。「テーマはとても大事です」って言われて。
それはなぜかっていうと,これからこの企画をプロジェクトとして進めていくなかで,いろんな意見が出てきた時に,そっちに流されてしまうことがあるかもしれない。ほんとに私がやりたいと思っていたことからブレていく可能性がある。その時にテーマさえきちんとしていれば,またそこに立ち戻って,最初の私のイメージどおりのことをちゃんと実行することができる。方向性がブレた時に,また基軸に戻すことができる。
だからテーマがものすごく大事だと。そうしたアドバイスをいただき,今回のフラッシュモブを通して何を得たいのか,何のためにやるのか,実行委員会のなかで何度も話し合って,私はどうしてこういうことをやりたいと思ったかをみんなで共有して,そうして「そだちあい」というテーマが生まれたんです。
みんなで一緒にやることのなかに「そだちあい」がある。
例えば私が誰かに何かを頼まれて,ちょっと大変だなって思っても,それをやってみることによって,前よりちょっと上手く出来るようになっていたりする。反対に私ができないことを誰かに助けてもらったりすると,その人もちょっと上達したりしている。何かを一緒にやることによって,それぞれが育ちあっていくのだなって思ったの。
私が誰かのために何かお手伝いをすると,「ありがとう」って言ってもらえる。そのことがとても嬉しくて,「ありがとう」って言ってくれて「ありがとう」って。「ありがとう」のシェア,そういう感じを大事にしたいなーと思うんです。
「このまちのそだちあいがたまプラーザから日本中に広がっていきますように」
ワークショップのなかで,どんなまちにしたいか,何回も問われる場面がありました。私はそのたびに,たまプラは「おしゃれなまち」とか「便利なまち」っていうイメージがあるけれども,そうではなくて「人が育つまち」とか「やさしい人が住んでいるまち」とか,そういうイメージのまちにしたいなって,ずっと思っていた。
フラッシュモブの当日までにはいろいろな大変なことがあったんだけど,テーマをちゃんと決めたことによって,そのテーマに助けられながら,導かれながら進めていくことができた。
テーマというものが本当に大事なものだということを知ることができたのは,私の財産ですね。そういうことを教えてもらえてほんとによかったなーって。
トップに戻る

DSC00907

■1,349人分のアンケートを回収・・・でも,ちょっとしんどくなった

石塚先生(石塚計画デザイン事務所代表取締役)からは,「まちの人たちがどういうことをしたいって思っているかがすごく大事だよ」「林さんがやりたいやりたいって言ってるだけじゃなくて,みんながどう思っているかということが大切だよ」と言われました。
そこでまちの人たちがたまプラーザでフラッシュモブをやることについてどう思っているかっていうアンケートを実施し,1,349人分を回収することができました。
そして,このアンケートの結果から,ほんとに多くの人がフラッシュモブをやりたいと願っていることがわかりました。
これだけの人数のアンケートをとるのって結構大変だったんだけど,私一人でやったんじゃなくて,私が誰かに頼むと「わかったー。配っておきますよ」って,それをもらった人がまた誰かに配る,というようにどんどん広がっていった。で,その時に「何? フラッシュモブって」って知らない人が多かった。それで,みんなが「フラッシュモブっていうのはね・・・」「シビックプライドっていうのはね・・・」って私に代わって説明してくれる。それを聞いた人がまた誰かに説明する。私はそのことがすごく嬉しかったんです。なんとなく,まちのみんながフラッシュモブという言葉でつながったみたいで。たくさんアンケートが集まったことも嬉しかったけど,このこと自体がシビックプライド的だって感じた。
だから,このアンケートをとっただけでいいや,もう十分っていう気持ちになっちゃった。アンケート集めで結構疲れちゃったし。そしたら,関さん(実行委員)が「ダメだよ。最後までやらないと」って。それにまちのみんなもフラッシュモブをやりたいって思い始めていた。「いつやるの?」「何やるの?」「やるならこういうことやりたい」っていう声が出てきた。もうフラッシュモブは私だけの夢ではなくて,みんなの夢になっちゃったんだなって感じた。私が言い出した以上,最後までやりとげないといけないなーって。
まちのみんなのフラッシュモブをやりたいという気持ちが背中を押してくれることになった。でも本当にできるかできないかもわからない,やりたい場所でできそうにもない,これだけみんながやりたいって言ってることをほんとに私がまとめきれるのかっていう怖さもあった。
そんな時に思ったのは,これって出産みたいなものだなって。妊娠しちゃった以上生むしかない。そして私は子ども3人生んでるから,多分大丈夫だろうって。きっとみんなが協力してくれる,これだけの人たちの思いがあるなら大丈夫,頑張ろうって思ったんです。
トップに戻る

DSC00917

■「モブっていいとも」

いろんなもので「モブ」(踊っている様子とか)を表現する「モブっていいとも」。上はフォカッチャで,下はハンバーグ。みんながいろいろな作品の写真を送ってきてくれた。これと応援メッセージのスライドショー。
みんなが願っているんだよーってことをアピールしたかったし,みんながやりたいと思っている気持ちをキープしよう,という気持ちもありました。
トップに戻る

DSC00938

■「林さんに何かあった時は・・・」

私ひとつだけ,これは私が絶対やらなきゃいけないな,と思ったことがあって・・・それは,謝ること。
私は実行委員のメンバーとかにいろんなことをふります。これやってあれやってって。でも,何かあったら私が責任をとる。私に出来るのは謝ることだけだと。
謝ることって大変だけど,私はそれを子どもたちから教えてもらったのね。子どもたちがいろんなことをしでかしてくる。そのたびに私は親として謝りに行く。子どもが生まれるまでは,人に迷惑をかけないようにって思って生きてきたから,そんなに人に深々と頭を下げたことはなかったです。
ある時なんて,うちの5階の窓から下に物を投げて,他人様の車の屋根を壊してしまったり・・・他にも本当にいろいろあった。これまでに経験したことのないことばかり。菓子折りを持って謝りにいくって大変なことだった。
夫とは「他人に頭を下げる経験をさせてくれるために,この子たちは生まれてきたのかもね」って話しました(笑) 人に迷惑をかけないで生きていこうってずっと思ってきたけど,人に迷惑をかけながらじゃないと生きていくことなんてできないんだなって。迷惑をかけないで生きていけるなんて思っていた私たちってなんて傲慢だったんだろうって。そのことを気づかせてくれたのが,子どもたちだったのね。
当日一番怖かったのは,けが人が出たらどうしようってこと。例えばバック転した時足が観ている一般の人にあたってけがをさせたり,もしかしたら裁判になることだってあるかもしれないし。当日打ち上げの場所に私はいなくて,どこかの病院で付き添っている,ということも想定していました。
もちろん保険は全員にかけました。ただ,私だけは契約者なので保険がかけられなくて,林さんに何かあった時は,何もおりませんって言われて(笑)
トップに戻る

DSC00914

■「雨が降ったらどうしますか?」

本番が近くなったある時,ヤビっち(カプリオールのメンバー)から「林さん,雨が降ったらどうしますか?」って聞かれました。
「僕は雨バージョンでやりたい。傘をさしながらみんなで踊るものを考えているので。それはすぐできるから,僕,当日の朝リハーサルで教えるので,どうですか?」って提案があって。
それは私の考えとは違っていて,私はやっぱりみんながこれまで練習してきたものを最後に一緒にやりたい。今までせっかく練習してきて,それを発表する場がなくて,じゃあその日にすぐできるカサを持ったのをやったとして,みんなが満足できるかな,と思ったんです。
そのことをヤビっちに言ったら,「わかりました。そうしましょう。でも,雨降ったらどうしますか?」って。
「じゃあ,雨降ったらフラッシュモブでもなんでもなくなるけど,学校の体育館で,すごい素敵な動画を撮影することにフォーカスして,やりましょう」と。
そして,11月4日。前日の夜中から雨が降り出して,当日の午前中にやんだ・・・。これぐらいだったら,できるんじゃないか・・・。それが一番いやなパターンだった。
午前中体育館でリハーサルをやっている時に,フラッシュモブ実行場所のステーションコートで待機していた東急電鉄の岡本Jさん(岡本さんがお二人いらっしゃるのでお名前からJさんと呼ばせてもらっていました)と電話でやりとりをしていて,もう1時間ごとに「林さん,今,雨降ってます」「今やみましたけど下が濡れてます,どうしましょう」
駅のステーションコートでやるか体育館でやるかの最終ジャッジは,12時にするって決めていたんですね。でも,12時にはジャッジできない状態だった。12時に現場を確認して私とカプリで決めるってことになっていて,リハーサルが終わって駆けつけました。
そしたら,雨はやんでいる。下もそこそこ乾き始めているけど滑る。「これできるんじゃない?」って言ったら,カプリの人たちは「僕たち怖くてこんな滑るところでできません」って。
「でも,一部のパフォーマンスだったらできます。ダンスも横ステップはできません。縦の動きのみだったら可能です。走るのもナシです」で,「できることだけで,今から1時間で僕がパフォーマンスの内容を変えます」ってヤビッちが言い切ったのね。
それでヤビっちは体育館にもどって,ニコニコしながらみんなにすごくわかりやすくダンスの変更点を説明した。
ところが,あとでヤビッちに聞いたら「どうしよう,どうしようって思ってましたよ~」と。そんな心の動揺を一切みんなに悟られることなく,説明したヤビっちを私はほんとにすばらしいと思う。尊敬します。
トップに戻る

■「やべえぞ,これ。むちゃくちゃいいぞ」

体育館ではそういうひとつの物語ができた。かたや実行場所のステーションコートでは,Jさんや市川さん(東急電鉄)が雨で濡れたタイルをモップで拭いてる。でも,モップがびしょびしょので拭いてるから,私がそんなので拭いたらダメダメって言って,ようやくテラスの担当の方から雑巾や新聞紙が届いて,それでバーッと拭いて。
ステーションコートには,フラッシュモブが行われることを知ってる人たち,ほかのまちのダブルダッチのチームの子どもたちや,美中の校長先生もみえていた。その人たちみんなに「ちょっと拭いて拭いてー」って言って(笑) 拭いてると,知ってる人が通りかかって「林さん何やってるの?」って。「あ,ちょっとね・・・,拭いてー」って頼んで。もうみんなで拭きまくって,地面はパーフェクトな状態になってきたんです。
その段階で実施する時間の変更もしました。1時半と2時半の2回やる予定だったけど,まず2時に1回やるってことにして。
そこにカプリオールが到着して,私が「完璧だよ。できるよ。みんなで拭いたんだよ」って。
カプリは「なんかすごく拭いたことによって,ただ乾くよりもものすごくキュッキュッってなって,最高のコンディションになった。やべえぞ,これ。むちゃくちゃいいぞ」って(笑)
最初から晴れていたら,あんなおまけのような感動の物語は生まれなかった。もちろんパフォーマンスも最高だったし,そこまでのいろんなことも素晴らしかったけど,あの瞬間にみんなの「ステーションコートでパフォーマンスをやりたい」という気持ちがこんなにもひとつになった。あの瞬間こそ一番の感動だなーって,思いました。でも,その場面を誰も撮ってなかった・・・。
まあでも,こんなふうにみんなの言葉で語り継いでいくことも,もうひとつの素敵なことかな,と思っています。
トップに戻る

DSC00932

■本番終了後のアンケート「たまプラーザがうらやましいです」

本番終了後のアンケートには,ほんとに嬉しい感想をいっぱい書いてくださった。ものすごくたくさん書いてくださった。
アンケートに答えるっていうアクションを起こしてくれたこともすごく嬉しかったですね。
ほかのまちの方からの「たまプラーザがうらやましいです」「私のまちでもこんなことがあったらいいのに」「たまプラーザに住みたいと思いました」などという感想や,キャストの方からの「顔見知りが増えて,今まで知らなかった人と仲良くなれた」「今度やる時は何かお手伝いしたいです」「たまプラーザの人みんなが家族に思えました」という感想はとても嬉しかったです。
トップに戻る

DSC00925

■もう一人の自分

自分にふりかかってくることって,全部自分に必要だから与えられているんだろうなって思うんですね。出会う人とか出来事とか。それは楽しいことも嬉しいことも嫌なことも辛いことも全部,私がこの先,生きていくために必要だから私の身に起こっているんだろうな,と思った時に,ああ有難いなっていうふうに思う。
大変なことを乗り越えた時には,それまでとは違う自分がいるはずだから。悔しい思いや悲しい思いを経験することができたことが,また新たな自分を作り出していると思うから,すごく全部が有難いなって思う。
嫌なことや大変なことがあると,ちょっとワクワクするのね。もちろん嫌だなーと思うけれども,「こういうことに対して私は嫌と感じる人なんだ」って,改めて自分を知ることができるし,乗り越えた先に今とは違うどういう自分が待っているんだろうって・・・ちょっとワクワクする。私は今この嫌な場面をどうやって乗り越えていくんだろう? って,もう一人の自分が自分を見ている感じ。
トップに戻る

DSC00934

■大きな恐怖,不安とプレッシャー

出産に例えて言うと,去年の11月4日っていうのが出産日だとしたら,そこに向けて頑張ってきて,フラッシュモブが成功したっていうのは無事に元気な赤ちゃんが誕生したっていうのと同じ。
生まれちゃったら,生みっぱなしではだめで,それを責任をもって素敵に育てていかなくてはいけないってことが,まあ薄々とは感じていたけれども,ほんとに終わった瞬間にそういうプレッシャーがブワァーっと襲いかかってきた。
その時にそういう不安を関さんとか石塚先生にお話ししたら,関さんは「一人で育てていくのは大変だけど,みんなで楽しく育てていけば大丈夫だよ」って言ってくれた。
石塚先生も「一人で考えちゃだめだよ」って。「みんなで考えていくんだよ」って。
自分の子育てと照らし合わせた時にほんとにそうだなって思いました。そう言えば,私もいろんな人にお世話になって子どもを育ててきた。それと一緒だ,と思って。一人でいい子に育てよう,立派に育てようと思っても,それは無理で,こんなにたくさんの150人の赤ちゃんが生まれたんだから,またそれをみんなで育てていこう。そこからが「そだちあい」。また「そだちあい」が始まるんだなって。これからが,ほんとにスタートだなって。
私はフラッシュモブが終わったら,脱力して,しばらく何も手がつかなくて,あー終わったーって,もぬけの殻みたいになっちゃって,もしかしたら,ちょっとしたウツ状態になるかもしれないなーって思っていたんですね。それまですごく大変な時期もあったから。本番当日までの1か月ぐらいはすごく忙しかったし。でも,実際は全然違って,終わって成功して感動もしましたけど,それ以上にものすごく大きな恐怖,不安とプレッシャーがあってウツになってるどころじゃなかったですね。この先はどうしたらいいだろうって・・・。
フラッシュモブが終わるとみんなから「次はいつやるの?」「何やるの?」「こういうことやりたい」っていう声がいっぱい出てきた。その声をやっぱりみんなでシェアしたいな,と思って,3月7日にワークショップをやります。([モブメイキング上映会&わ~く★ワークショップ]たまプラーザテラス・プラーザホール 午後6時~)
トップに戻る

■動画の編集 一番いいシーンで全員が写るように

動画編集は,ヤビッちがなるべく全員が映り込むように頑張ってくれました。ものすごい膨大な撮影データがもともとあるんですね。いろんな方向から9台のカメラで撮影していて,それを全部見て,一番いいシーンで全員が写るように,ものすごく時間のかかる作業だったらしいんだけど。
でも,どうしても数名,編集の段階で写らない子がいる。できあがった動画を見た時に,あ,私出てたのに写ってない,僕写ってないって淋しい思いをする子が絶対いると思うから,(YouTubeのほうには付けなかったですが,)DVDにはキャスト・スタッフ全員のお名前をエンドロールに載せました。
メイキングムービーのほうは,もっと大変で,体育館での練習とか,いろんなシーンを複数の人が撮っているので。そのデータのチェック作業だけで,ものすごい時間かかって。でも,メイキングはもうすっごくよくて,そこにこそ「そだちあい」がある。それはね,出演した人しか感動しないかもしれないけど。
トップに戻る

DSC00904

■この際,聞いておこう Q&A

(家族の食事づくりは手抜きしない?) 子どもが小さい時は安全なものを食べさせたいという思いから,なるべく手作りのもの,基本的には私が選んだ材料で私が作ったもの,を大事にしてきました。
で,今は息子二人,中3と高2は反抗期であまり口をきかない。会話が少なくなる。こちらが話しかけても「うー」とか「あー」しか言わない。むこうから「ねえ,ママ・・・」って言うことはない。
でも,私が作ったごはんを食べる。私が作ったお弁当を,ありがとうとか言いませんけど,黙って持っていって全部食べてお弁当箱を戻す。次の日また持っていくことで,心がつながっている気がして。だからお弁当は,自己満足なんですけど,「こんなもの食えるか」って言わずに持っていって食べて帰ってくるだけで,私はまだこの子たちに必要とされているんだなーって。それが信頼関係。もちろん心のどこかでは感謝してると思いますよ。

(美しいスタイルはどうやって維持していますか?) 太らないようにはしています(笑) やっぱり代謝が悪くなって,痩せにくくなってきました。もともとそんなに太るほうではないですけど。すごく食べ過ぎちゃったな,と思ったら翌日は1食抜くとかはします。あとストレッチとか。
(お酒は?) すごく飲みます(笑) 最近はワイン。
(カロリー的にお酒はどうなんですか?) お酒飲むと太りますね,やっぱり(笑) 

(美容のために何か努力してますか?) 私,髪の毛も自分で切って美容室行かないし,化粧品も全然気にしなくて,クレンジングも一番安いので,洗顔石鹸なんか使ったことなくて,子どもが手を洗うので洗ってるし,化粧水とか乳液,美溶液もつけなくて,ニベヤがあればニベヤだし,ワセリンがあればワセリン,馬油(ばーゆ)があれば馬油。アトリックスとかも。その時その時あるもので。化粧下地もそれで。あとは日焼け止め塗るぐらいで。
(ハンドクリーム顔に塗ってて大丈夫ですか?) 全然,大丈夫。

(毎日,日の出前から起きてて,早起きだけど,睡眠時間は?) 今は5時半に起きてますけど,子どもの時からすごい早起きだったんです。目が覚めちゃうの。親とかに起こされたことがない。「もう少し寝てなさい」って親に言われても,寝てられなくて,その時は集合住宅の社宅だったんだけど,朝早く起きてもやることないから一番上の階から下の階までの階段を勝手にほうきで掃いて水撒いたりしてたの。そしたら近所の人がみんな「いい子だね」「いい子だね」って言ってくれて。奉仕活動は小学生の時から自主的にやってる(笑) その代わり夜は早く寝ていました。今でも,何もなければ夜は9時とかには寝ます。
(毎晩2時か3時まで飲んでいるという噂ですが・・・) いやいや。そんなことは1年に1回か2回ですよ(笑) 全然全然! 違う違う! そんなことしてない(笑) でも,2時に寝ても朝は早く起きます。

林 月子(はやし つきこ)さん/乙女座
「たまプラー座だよ! 全員集合!」まちの人たちでつくるオリジナルパフォーマンス
フラッシュモブ実行委員会代表・美しが丘ダブルダッチクラブ主宰
たまプラーザ在住 2男1女の母 

(写真/立山徹 構成/辺見真智子)
トップに戻る