<特別寄稿>
たまプラのIT隊長、千葉恭弘さん
桜の街の「マッピングパーティ」

1マッピング

ネット上で独自の地図を作ろう。
マッピングパーティってご存知ですか?
多分ほとんどの方が知らないと思います。
最近インターネット上で様々な地図サービスが利用できるようになり、自分たち独自の地図を作成しようという動きが地域活動をしている団体でちょっとしたトレンドになっています。身近なところでは地図上に美味しいお店の情報を載せたり、エコ活動や防災活動などを進めている団体では情報の種類別に地図に関連付けて情報を「見える化」しています。
我がたまプラ次世代郊外まちづくり住民創発プロジェクトでもこの新しい表現手段を活動の中に取り込もうと、たまプラーザの街で街路樹マッピングパーティーを企画しました。(交流の森・たまプラnetwork共催)
時期的には桜満開のたまプラーザ桜まつりに合わせて、街歩きとお祭りを楽しみ、同時にマップ登録までやってしまおうという欲張りな企画です。終了後の交流会も目玉の一つです。ウォッチする対象はもちろん桜とユリノキ、とくにたまプラの貴重な資源である桜をこの際、徹底的に調べて記録します。
当日はマップの専門家オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン(OSM) の飯田哲氏、シビックテクノロジーの専門家コードフォジャパン(CfJ)の関治之氏、植生の専門家 住友林業の伊藤俊哉氏など、錚々たる方々がサポートにまわります。CfJのメンバーも10名を超える方々がボランティアで参加です。

■桜まつり会場・次世代郊外まちづくりのブース前に集合。
マッピング24月5日イベント当日、雨模様の天気が気になります。10時に実行委員は桜まつりの会場である美しが丘公園に集合。街歩きに必要な地図、グループ登録シート、会場表示サイン、地図登録のマニュアルなど実行委員の大野承さんが完璧に準備してスタンバイ。時折り雨が強く降り、季節外れの寒さに満開の桜も震えているようです。開始予定の11時になると三々五々参加メンバーが集合して来ました。

■世界中で活用されるオープンストリートマップ
スマホを使って地図登録するグループは「デジタル班」、手書きメモ派は「アナログ班」として分け、各班内に4~5名でグループを構成します。各グループには街歩きのコースが割り当てられます。今回のウォッチのポイントは樹木の位置情報、幹の太さ、木の高さや植生の健康状態などを観測します。各樹木にはすでに管理番号(青葉土木事務所)が振られているので、この番号との紐つけもします。
CfJのメンバーをリーダーにして各グループに別れ、マップ記録の手順をレクチャーしてもらった後、グループ単位での行動に移行しました。まずランチをみんなでとる班、スマホやノートを片手に早速街に繰り出す班、子供ごころに帰って遠足の時のようにウキウキしています。
私はデジタル班のBグループに入りました。ここでデジタル班の登録ツールとして使った「オープンストリートマップ」とは何かをOSM JapanのWebサイトから引用すると、「 OpenStreetMap(OSM)は、道路地図などの地理情報データを誰でも利用できるよう、フリーの地理情報データを作成することを目的としたプロジェクトです。誰でも自由に参加して、誰でも自由に編集でき、誰でも自由に利用する事が出来ます。」
Web上にはその他にもマップ機能を提供する幾つかのサービスがあります。代表的なものはGoogle Mapでしょう。これらのマップ機能はライセンス条項が結構きびしく、印刷物に自由に掲載することなどは制限されています。それに対してオープンストリートマップは登録・編集・引用・掲載など自由に利用することができ、OpenStreetMap Foundationにより世界中での活用が進められています。そしてパソコンやスマホなどから簡単にマップ登録ができるように専用の「アプリ」が用意されており、街歩きにはうってつけです。

■樹木の測定は・・・
3マッピングさて、マッピングパーティの開始です。気になっている雨はうまい具合に止んで青空がのぞき始めました。我がBグループには美しが丘公園から伸びている公園通りの右側(通称「桜並木」)が観察地域として割り当てられました。
満開の桜のハイライトエリアです。
マップへの登録はリーダーがもっぱら担当、記録班は木の高さや幹の太さ、管理番号などを書きとめながら証拠写真を撮っていきます。
樹木の位置はスマホのGPS機能で自動的に記録され、樹木の高さは、人が手を挙げた高さがほぼ2mでこれを目安に何倍かを目視で測ります。

マッピング4

幹の太さは持参のテープで測定します。
マッピング5

樹木の健康状態のチェックでは、木に苔が生えているとか、空洞化が進んでいるなどの状態を記録します。切り倒されてしまった木の切り株などもしっかり記録に残します。

■途中、美味しいパン屋さんにちょっと寄り道。マッピング6
公園通りの中ほどに天然酵母のパン屋さんを見つけ、ちょっと買い食い。美味しい!
Bグループは進捗具合が速い! 1時間もしない内に割り当てられた区画の測定は終わってしまいそうです。これで終わりかと思っているところで、実行委員パトロール隊に遭遇。
あまりの速さに、「・・・それならあと2区画を実施すべし!」というミッションを与えられました。世の中、甘くない! 新たに駅前通りを東急百貨店の前からイトーヨーカドーの先のブロックまで、気を取り直して再度挑戦。

■ミッション追加・・・東急百貨店の前からイトーヨーカドーまで
マッピング7おかげで、東急の2Fから伸びている歩道橋の上から素晴らしい桜景色が撮れました。桜の高さを測るために歩道橋に上ったのですが、新たな発見をしました。この通りは緩やかな下り坂になっているのですが、桜の高さが上に行くほど低くなっていて、見事に東急百貨店の建物の高さに揃っているのです。設計時点で計画的に配置されたのかな! さて、ヨーカドーの角を廻ると我々のミッションは完了。やっと終わった。
マッピング8
マッピング9

疲れた身体を引きずってスタート地点の美しが丘公園までたどり着き、ここで記念写真をパチリ!
これがBグループの雄姿です。
皆様お疲れ様でした。

■最後に登録と編集。 楽しかった! またやりましょう!
マッピング10まだまだ最後の工程が残っています。しばらく桜まつりを銘々で楽しんだ後、3時より美しが丘中部自治会館に再度集結。地図上の登録・編集作業です。アナログ班は記録してきたノートからオープンストリートマップに改めてパソコンを使って登録をします。デジタル班はすでに登録済みの樹木データを編集・微調整しながら整えていきます。CfJのメンバーはさすがに慣れています。1時間もしない内に作業終了です。
その後OSMの飯田さんからオープンストリートマップの紹介があり、完成済みのマップが披露されました。OSMから提供されているAPIを使うとマップ自体を自分達好みに編集できそうです。
完成マップ上に見えるグリーンの点(冒頭の写真)が今回のマッピングパーティで登録した観察樹木です。これからもアイディア次第でこのマップを使って楽しいイベントを仕込むことができるでしょう。
最後に住友林業の伊藤さんからグリーンエコロジーのレクチャーがあり、植生の知識の乏しい私には目から鱗のお話でした。
フィナーレは交流会です。これが目的で参加した人も多そう。お酒も入って和気あいあいと、新しい出会いがあり、また他の団体の活動を改めて知ることができ、本当に楽しいひとときでした。サポートしていただいた皆様、ありがとうございました。
最後に全員で集合写真。またやりましょう!8マッピング写真(大野さん)IMG_5885

OpenStreetMap Foundation Japan
http://osm.jp/

CODE for JAPAN
http://code4japan.org/

(写真/千葉恭弘・大野承   文/千葉恭弘)

3年後のあるべき姿を考えよう!
起業勉強会
「ソーシャルビジネス起業と
持続発展に求められる視点」
レポート

起業勉強会写真2

2014年3月31日たまプラーザ地域ケアプラザで、たまプラnetwork主催、起業勉強会「ソーシャルビジネス起業と持続発展に求められる視点」が開かれました。
講師はETIC.の佐々木健介さんです。出席者は19名。

■ETIC.とは

ETIC.佐々木 健介さん

ETIC.佐々木健介さん

ETIC.(特定非営利活動法人エティック)は、ソーシャルビジネスの起業支援を通して起業家型リーダーの育成と社会のイノベーションを目指すNPOです。
1993年早稲田大学で起業家を目指す学生が集まり、勉強会としてスタート、1997年事務局機能の拡大にともない、事務局の名称を「ETIC.(エティック)」に統一。学生団体からNPO事業体へ移行しました。
2000年3月経済企画庁(現内閣府)よりNPO法人(特定非営利活動法人)に認証。
2008年は企業連携を強化した年です。この年に起こったリーマンショックにより、なぜ働くか、が問われるようになりました。また、企業の社会的役割が問い直された年でもあります。
2011年は、3月11日に東北大震災が起きた年です。この年は震災復興リーダー支援プログラムを立ち上げ、仕事を辞めて復興の手伝いに若者たちが東北に向かいました。
ETIC.は組織に依存せず、自立したい、自分の想いと仕事の距離を近づけたい、社会も地域も家族も自分も生かしていく可能性を求める若者を応援してきました。
新たな時代の一つの生き方として社会起業家が注目された年でもありました。
スタッフは70名(うち専従36名)※2013年12月現在HPより
今回お話をしていただいた佐々木健介さんはインキュベーション事業部マネージャーをされています。

■企業は社会的役割を、NPOは価値創造を。
何をどうすれば満足できるのか?
1990年のバブル崩壊以降、経済成長が停滞したことから、若者たちに変化が現れました。今までのように企業に勤めて、与えられた仕事をするよりも、何か地域の役に立ちたい、人の役に立ちたいと考える若者が出てきました。それを受けて企業も、ただ商売をして儲ければいいという姿勢から、社会的役割を果たすことが求められるようになりました。NPOが注目を集め始めたのもちょうど同じ時期です。
ここでいくつかの問題が起きました。
例えば、地域活動はどうしたら事業化できるか?
地域に貢献することでメシが食えるかということです。
地域活動は、そもそも行政や企業が取り組まない、あるいは取り組めない分野です。というのも、注目度が低く、元々採算が取れない分野だからです。
NPOはそこで、ボランティアという枠組みを超えて、社会的企業(ソーシャルビジネス)と言う新しいジャンルを作り始めていきました。
そこでは、NPOが新たな価値を創造し、その担い手として発展していきました。
ETIC.ではそれらをふまえて、2001年にソーシャルビジネスを行う社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)支援をスタートさせました。

さて、地域活動は、息長く継続的に、多くの人を巻き込む動きにすることこそが重要です。
そこで、我々が考えなければならないのは、
なぜそのプロジェクト(地域課題の解決=地域活動)をするのか?
どこまでやりたいか? 何をどうすれば満足できるのか?
そこに自分はどこまで関与したいのか?
何ができそうか? 何は他の人に委ねなければならないか?
と、いうことだと佐々木さんは言われます。

■実現したいことは何か?
さらに、事業化するに際して、問い直すべきことがあります。
実現したいことは何か?
自分の最適な関わり方は何か? 仕事として? 地域活動として?
あるいは、そのプロジェクトの中で専門家役なのか、火付け役なのか、事務局役なのか。
また、事業化は本当に必要なのか? ボランタリーな動きでも継続可能なのか。
独立した組織が必要なのか? 既存の組織を活用できないのか。
続けることが本当に必要な活動なのか? きっかけづくりや起爆剤としての役割を果たせばよいのではないか。

みずからの問題意識を絶えず問い直し、どんなサービスを届けたいのか? 対象は誰なのか? 自分の強みは何なのか、足りない部分はどこで、どうやって補うのか? 他の人とどうやって組んでいくのか?
たくさんのことを検討することが求められます。

■3年後のあるべき姿を描くこと。
事例紹介。

NPO1佐々木さんは、これらの答えを出す一つの方法として「3年後のあるべき姿を考える」と言われました。
3年後に何をするか、どこまでやるか、どういう体制でやるか、3年後のあるべき姿を描くことによって、今自分がやるべきことが明確になります。

いくつかの事例が挙げられました。
最初の事例は、がん患者の相談に乗る専門家集団のネットワークを作った北海道の女医さんの話。(杉山絢子さん "がん"のよろず相談窓口 CAN net)
3年後の目標は、年間5000人の相談に乗れる状況を作りたい。年に5000人ということは、月に約400人。相談者が一人二人ではとても無理です。そこで、まず相談の内容を把握して専門家に振るための5人の事務局を雇うことを決めました。こうやって具体的な数字を決めることで、事業に必要な人員、予算、組織構成などが見えてきます。
次の事例は、日本酒で地域を元気にする活動「出張日本酒BAR」。(道前理緒さん)
常設の店舗を用意して経営していくのは大変ですが、一夜限りの店を地域で場所を借りて開くなら可能ではないかというアイデアです。
この出張BARは、大の日本酒党の道前さんがセレクトした極上の日本酒が飲めるということで、ネット上の呼びかけで来た人たちや一夜だけ開いているのでちょっと行ってみようかという近所の人たちが集まって盛り上がっているそうです。
また、介護者の支援事業の事例(誰もが自然に介護ができる社会を目指して「となりの介護」川内潤さん)や悩みを持つ人をサポートする(傾聴ボランティア)NPOが市の受託事業として年間900万円で始めた事業の事例(特定非営利活動法人アーモンド コミュニティ ネットワーク)なども紹介されました。

■着眼大局、着手小局
3年後、どうなりたいか、何をどうしたいか、漠然とではなく、具体的にそれを考えて、出していきます。次に出てきたあるべき姿を実現するにはどうしたらいいか、具体化していきます。考える段階で、忘れてはならないことは、必ず紙に書き出して、見える形にすることです。
この作業を何度も繰り返し行うことで、徐々に考えとあるべき姿がまとまっていきます。
ここで重要なのは、「着眼大局、着手小局」。まず、眼をつける時は全体を大きく見て想を練り、そして、実践は小さなことを積み重ねていきます。
具体化する段階では、対象の絞り込みを行います。対象をどうするか、初めは対象を絞り込み、徐々に対象を広げていった方が成功する確率は高くなります。

■「ポジティブな解体」もアリ。
また、この段階では、各メンバーが目指すものがはっきりしてきます。自分の目指すものと違うことをしても徒労に終わることが多く、途中でやめることになりがちです。
この段階では、目指すものが違えば、組織とメンバーがポジティブに解体したり、別のメンバーが加わったりすることも大切なことです。

■ボランタリーな活動で行われる「まちづくり」は、より多くの人を巻き込んでいけるのか・・・
勉強会参加者は、次世代郊外まちづくり住民創発プロジェクトの関係者が大半でしたが、今後それぞれのプロジェクトを継続していく活動資金をどうするのか、また活動にかかわる人はずっとボランティアの奉仕でいいのか、実は大きな問題をどのプロジェクトも抱えているようにみえます。
とりわけすべてがボランタリーな活動で行われる「まちづくり」は、本当の意味で社会的な認知が得られるのか、より多くの人を巻き込んでいけるのか・・・こんな想いから、この勉強会は企画されました。
プロジェクトにかかわる一員として、改めて佐々木さんの問いかけの一つ一つを検証していきたいと思いました。

ETIC. (Entrepreneurial Training for Innovative Communities.)
https://www.etic.or.jp/

CAN net
http://can-net.jp/

となりの介護
http://blog.livedoor.jp/kawajun1980/

特定非営利活動法人アーモンド コミュニティ ネットワーク
http://almondcommunitynetwork.com/

(写真/辺見真智子 文/立山徹)