2月10日(月)、都筑区の東京都市大学横浜キャンパスで横浜オープンデータソリューション発展委員会と青葉区民会議の主催で防災をテーマにしたアイディアソンが行われました。次世代郊外まちづくり住民創発PJからは「交流の森」と「あおばフレンズ」が参加しました。
目次
1.イベント概要
2.アイディアソンの様子
3.主催者からのご案内
4.東京都市大学 上野教授の後日談
1.イベント概要(主催者より)
これまで横浜オープンデータソリューション発展委員会は、防災に関して、旭区左近山団地周辺で、リスト株式会社、株式会社野毛印刷社、ジオリパブリックジャパン、東京都市大学メディア情報学部上野研究室などと協力しながら防災科学研究所で開発されたオープンソースのweb GISのeコミマップやガリバーマップを用いた防災街歩きを行い、地域における防災データの充実と横浜市のオープンデータである防災データを関連づける活動を行ってきました。
今回は、こうした活動をさらに展開するために以前から防災に関する研究会、街歩きを数多く実施されてきた青葉区民会議の皆さんと防災というテーマを中心としたアイディアソンを行うことになりました。
このアイディアソンでは、eコミマップの他、AR、その他、使えるものは何でも使うことを想定しています。対象領域は、青葉区、都筑区など横浜北部とします。また、アイディアソンは、防災を主なテーマとしますが、地域の魅力発信といったものもテーマにします。
タイムスケジュール
17:00-18:00 アプリ紹介、活動報告、使えるデータの紹介
18:00-19:30 アイディアソン
19:30-20:00 まとめ発表
20:15分頃よりシェアリーカフェ(NPO法人 I Loveつづきが運営するコミュニティカフェ)で交流会
冒頭、東京都市大学の上野教授から今回の開催についての趣旨説明がありました。そのあと上野研究室の田村さん(3年生)から「eコミマップ」、「左近山イベント」、「防災家族」、「AR」の紹介がプロジェクターを使って行われました。
eコミマップ
http://ecom-plat.jp/index.php?gid=10457
旭区左近山防災街歩き
http://opendata.mods.jp/sakonyama/
防災家族
https://bousai-kazoku.jp/index.php
ARプロジェクト
http://ueno-lab.com/ar_project/
そのなかで、参加者の関心が高かったのは『すごい避難訓練ゲーム //Race to Survive//』です。もともと「すごい避難訓練」と「防災ボードゲーム」という二つのアイデアを融合した企画で、現在“絶賛開発中!”とのこと。 完成されると各地で防災訓練に採用されるのではないでしょうか。
http://www.slideshare.net/inuro/run-tosurvive
前半を終えたところで参加者の自己紹介があり、教授、学生、自治体職員、市民活動家、市議など多様な参加者がバランスよくグループに分かれて、防災をテーマにアイディアソンが開始されました。
私のグループでは、「従来の防災訓練は若い世代の参加が少なく、主催者動員型で形骸化しているのではないか」との意見から始まりました。
そして、災害図上訓練のように、シュミレーションゲームなどの手法を取り入れて、若い世代の参画や参加者自身が創意工夫して行動を考える訓練に変えれば、楽しく身に着く訓練になるのではないかという考えに集約されてきました。
具体的なアイディアとして、「心配な独居高齢者や要援護者の安否確認と防災拠点への搬送」や「真冬の避難所(体育館)生活体験」をゲームを取り入れた訓練で体験する。また、いっときの訓練で終わらせずにその体験を持続させるために、自分の分身(アバタ―)をスマートフォンアプリ上につくって、訓練以降もサバイバルさせ、リアルとネットの組み合わせで防災意識を高めるという、学生ならではの発想が盛り込まれました。負けじと市民活動家から、インセンティブに商店街クーポンを発行すれば地元商店振興にもなるというアイディアが加えられました。
グループごとの発表においても、“ゲーミフェケーション”というキーワードが繰り返し聞かれました。
上野教授から、「横浜市のリスト株式会社が行っているCSR活動『スポーツゴミ拾い』という“ゲーミフィケーション”された街の清掃活動が標準化され高い評価を得ているように、横浜北部からも防災をテーマにした様々な“ゲーミフィケーション”された防災訓練を試みて、それが標準化していければいい」とのご意見や、オープンデータの活用を推進している横浜市政策局の関口さんからは、今回のアイディアを「2/17締切の総務省主催のアプリコンテストへの投げかけ」「2/22の横浜オープンデータデイでの試み」「2/16青葉区民会議『減災講座』で区役所とアイディアを共有して今後の素地づくり」に活かしていきたいと心強いご発言もいただきました。
こうして盛会に終わったアイディアソンのあと、NPO法人 I Loveつづきが運営するコミュニティカフェ(Shairlycafe)に移動して交流会が開かれました。このコミュニティカフェが、また素晴らしい! ぜひ、たまプラーザにも欲しいと切に思うほどの・・・。
⇒2月28日に「交流の森」が見学をする予定なのでご紹介は別の機会に委ねましょう。
ご準備と采配をいただいたオーナーの岩室理事長に感謝申し上げます。
http://shairly.com/
3.主催者からご案内
1.「横浜オープンデータデイ」のイベント
2月22日に横浜大さん橋周辺で「横浜オープンデータデイ」が開催されます。
当日は、5つの分科会で、オープンデータを用いた市民参加の様々な企画があります。ぜひご参加ください。青葉・都筑での活動とも連携して、イベント後も横浜全体で盛り上げていければと思っています。
http://yokohamaopendata.jp/?p=187
2.「青葉区民会議 減災講座」
2月16日(日)1時半より青葉区役所4階 会議室
一部 青葉区医師会会長 山本さんより
・「青葉区の災害時応急医療」
・地域防災拠点と医療拠点(現災害時診療定点拠点)との連携など
二部 パネルディスカッション
「つなごう 地域力」
・地域で災害に取り組む人たちを交えて佐藤榮一さんの進行でさまざまな「これはっ!」という取り組みを聞き意見交換をします。
・桂小学校 救援隊-新しい支援の仕組み(山崎誠さん)
・ピッピ保育園 子育て施設と地域(鹿野奈津子さん)
・あざみ野第二小学校 医療拠点訓練も取り入れて!(西本和彦さん)
三部 減災ネットワークあおば を公開します。
・みなさんで創る防災に強いまち「あおば」のためにつながる!!をめざします。あなたの参加がつながりの一歩です。
このあと交流会です。
特別参加があります。
・横浜市政策局からオープンデータを防災へ。
・東京都市大学(上野先生)「防災アプリ eコミマップ」をどう使うか。
などなど、盛りだくさんの一日となります。
ぜひ、お友だち、防災拠点の仲間をお誘いのうえお出でください。
4.上野教授 後日談
昨日の「横浜北部防災アイディアソン」では、私なりに新たに見えてきたことが多かったです。みなさま、ありがとうございました。
世銀防災・減災ハッカソン名古屋会場の最優秀作品のrace to surviveと昨日の防災アイディアソンで、見えてきたというのは、以下のようなことです。
まず、改めて再確認されたことは、すでに青葉区では、青葉区民会議を中心に、避難所シミュレーション、図上避難訓練、医師、看護師を含めたレスキュー体制づくりといったリアルな状況を想定したシミュレーションがかなり行われているということです。
これにrace to surviveのようなある想定、設定、シナリオを入れたゲーム的要素を入れると、シミュレーション自体に、格段と膨らみが出てきて、面白くなるように思いました。
こうした防災シミュレーション・ゲームを考えるとき、スマートフォン・アプリは、アプリとして閉じたものではなくなります。従来ゲーム・アプリとは、どうしても、パソコン、あるいは、スマホの中で完結したものだったと思います。
しかし、防災シミュレーション・ゲームの構成要素は、まず第一に、リアルな街、地域であり、第二に、その街、地域の防災関連のデータです。さらに、そういうリアルなものをベースとしたシナリオであり、さらに、参加者のそこでのアクションです。
こうしたことを見るなら防災ゲームのアプリは、ゲームの一部を構成するにすぎず、すでにあるもののちょっとしたカスタマイズで十分だということにもなります。
例えば、防災科学研究所のEコミマップにその地域の災害関連のオープンデータをアップし、さらに、刻々と変わるシナリオを伝えるチャット・システムだけで、十分かも知れません。あるいは、以上をデータ、情報、シナリオをAR的に表示することも容易にできるでしょう。
近年は、アプリのデザインとは、アプリそれ自体で完結した世界のデザインではなく、新しい活動のデザイン、体験のデザインであるべきということが言われようになりました。そうであるとするなら、デザインすべきものは、アプリそれ自体ではなく、リアルな場所、データ、想定シナリオ、参加者の可能的活動を含んだ一種の拡張現実的な環境ということになると思います。
(写真/政野祐一)